マイナンバーカード交付枚数率が2021年5月時点で65.1%に達し、全国の市区中トップの加賀市。その躍進の背景には前年から取り組んできたマイナンバーカードの普及施策と窓口業務の効率化にあります。この記事では同市がマイナンバーカードの普及に向けて取り組んだ施策、それらを通して浮かび上がった課題、そして今後の施策展開に向けた示唆について取扱います。
最後には、記事中で扱っているスライドを含めた資料をダウンロードできるリンクもご紹介します。
こんな人におすすめ
- 自治体のマイナンバーカードに関する取り組みに関心のある人
この記事でわかること
- 石川県加賀市におけるマイナンバーカード普及の背景
- 加賀市の窓口業務改善施策の具体的内容
- 加賀市の取り組みから得られた課題・示唆
加賀市のマイナンバーカード普及状況
まず、加賀市におけるマイナンバーカード普及の経緯を見ていきます。マイナンバー制度の開始から4年が経った2020年6月時点では交付枚数率は14.2%にとどまっていましたが、同市は2020年6月にマイナンバーカード普及の促進に向けた施策の展開を、同年10月には窓口業務の改善を開始し、施策開始後約1年で交付枚数率は50.9ポイント増加しました。

特に、2020年10月以降の交付枚数率の伸びが大きくなっていることから、同市のマイナンバーカード担当窓口における業務改善施策がマイナンバーカードの普及に大きく貢献していることがわかります。
加賀市におけるマイナンバーカード普及率向上のための施策
続いて加賀市が2020年4月から開始したマイナンバーカード普及施策について、その具体的な内容をご紹介します。
同市は市民のマイナンバーカード取得を促す施策の一環として、所定の期間内にマイナンバーカードの交付申請を実施した市民に対して市内で利用できる「かが応援商品券」を配布する取り組みを始めました。同時期に国がマイナンバーカード交付申請者に対してマイナポイント5000円分を付与する施策を行なっていたため、加賀市民はこの期間中、マイナンバーカードの交付申請を行うことで計10,000円分のインセンティブを受けることができたことになります。


同施策は新型コロナウイルスに対する経済対策と併せた施策として始まったもので、市民のマイナンバーカードの取得の促進と、商品券の利用によるコロナ禍における市内消費の活性化の二点が目指されました。

同市は2021年度のマイナンバーカード交付枚数率の達成目標を80%に設定しており、5月時点では65.1%にまで到達しています。
マイナンバーカード申請から交付までの流れと浮かび上がった課題
先に述べた通り、加賀市におけるマイナンバーカードの普及に大きく貢献したのは、マイナンバーカード担当窓口における業務の改善でした。現場では具体的にどのような課題が浮かび上がり、どのような対応策が検討されたのでしょうか。
同市におけるマイナンバーカードの申請プロセスは以下の通りで、大きく申請時来庁方式、郵送による交付時来庁方式、電子申請による交付時来庁方式の3パターンに分かれます。

加賀市では全ての申請プロセスで必要な窓口での業務について、場所・時間・人員というあらゆる側面から課題があったようです。
まず、マイナンバーカード普及施策による申請数の増大に伴い、申請の効率化が急務となりました。特に申請時来庁方式は窓口での手続きに時間がかかり、混雑の原因となります。窓口の混雑を予防するための予約システムの整備や、タブレットで写真撮影から情報自動入力までの申請プロセスを完結する方法案などが検討されました。
また、マイナンバーカード担当窓口の人員が不足したため、窓口の増員が実施されました。10月以降は正職員の8名に加えて会計年度任用職員等を13名増員し、計21人体制で作業が進められました。
そのほかにも、同市の担当者に当時の様子を振り返っていただいたところ、以下のような改善策が出てきました。

マイナンバーカードの取得を促す施策を打ち出すことで申請数が必然的に多くなるため、その動向に先んじて、人員はもちろんのことタブレットや予約システムといった設備の増強を進めることが重要であることがわかります。
マイナンバーカードの普及がもたらす相乗効果
石川県加賀市はマイナンバーカードの利用用途拡大と市民の利便性向上を目指し、行政手続きの電子化に精力的に取り組んでいます。一連の取り組みが評価され、一連の取り組みが評価され、2021年6月には総務大臣表彰を受賞しました。

一方でマイナンバーカードの普及率向上が、電子申請を含めた電子政府サービス拡大の足掛かりとなる側面もあり、今後の同市における更なる行政デジタル化施策の推進と市民生活の利便性向上に期待がかかります。

本施策から得られた示唆
加賀市におけるマイナンバーカード普及施策・窓口業務改善から得られる示唆は大きく分けて2つあります。
一つは交付申請数の増加に合わせた窓口人員や設備強化の重要性についてです。特に人員については人数を増やすだけでなく、誰が率先してマイナンバーカードに関する知見をインプットし、後から業務に参加する職員に対してどのように知識を移転するかを検討することが重要です。加賀市の場合は、マイナンバーカードの発行業務に集中して従事した職員がいたため、普段の業務を兼任している職員が後から知見を吸収することができたようです。
第二に、申請プロセスの効率化についてです。加賀市におけるマイナンバーカード申請手続きでは、市民の申請書記入時の誤入力や写真と申請書との突合が問題となっていました。写真撮影とQRコード読取による申請書自動作成を一つのタブレットで完結することでこうした課題を解決し、申請プロセスを一気に効率化できる事が期待されます。ただ、タブレットやWi-Fiなどの整備にもコストと時間がかかり、時間が経過するほど業務フローの変更が難しくなるため、真っ先に検討・実行を進める事が求められる、と担当職員の方が語ってくれました。

資料のダウンロード
本記事でご紹介したスライドを含む、加賀市のマイナンバーカード普及施策の報告資料は以下のボタンからダウンロードいただくことが可能です。
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