2021年5月に平井卓也デジタル改革担当大臣は、「デジタル改革で申請不要のプッシュ型給付」を実現すると発表しました。これは、「プッシュ型行政サービス」のひとつであり、これまでの日本では行われてこなかった試みです。この記事では、「プッシュ型行政サービス」について解説するとともに、6月から行われる予定である「プッシュ型給付金(子育て世帯の特別給付金)」について説明していきます。
こんな方におすすめ
- プッシュ型行政サービスについて知りたい方
- プッシュ型給付金について知りたい方
この記事でわかること
- プッシュ型行政サービスの概要
- 行政サービスの未来
プッシュ型行政サービスの概要
プッシュ型行政サービスとは、一体どのような行政サービスなのでしょうか。ここではまず、その概要や種類について解説していきます。
プッシュ型行政サービスとは
一般的な「プッシュ型サービス」とは、サービス提供者がユーザーに対して能動的にサービスを提供することです。つまり、ユーザーはアクションを起こすことなく、受動的にサービスの提供を受けることができます。
これを行政サービスに当てはめたものが、「プッシュ型行政サービス」となります。国は、プッシュ型による情報提供を「一人ひとりに合った行政機関などからのお知らせを表示する機能」と定義しています。
実は、2014年にはすでに、地方公共団体ではプッシュ型行政サービスを提供し始めていました。例えば、「子育て世代への情報提供(三鷹市)」や「登録制のアンケート制度(市川市)」があります。

マイナンバー制度との関係
プッシュ型行政サービスについて、マイナンバー法に規定があります(附則6条4項2号)。この規定を基に、国はプッシュ型行政サービスの活用を推進しようとしています。
プッシュ型行政サービスがマイナンバー法に基づいているということは、マイナンバー制度と密接に関連しているということを意味しています。国は、マイナンバー制度導入の効果として、「行政機関から国民にプッシュ型の行政サービスを行うことが可能となる」ことを掲げています。
実際に、マイナポータルの「子育てワンストップサービス」では、子供の予防接種や保育園の入所に関する情報をプッシュ型で提供しています。

プッシュ型行政サービスでできること
プッシュ型行政サービスによって「ユーザーに最適な情報提供」を行うことができるようになります。そして政府は、2021年6月から開始予定である「子育て世代の特別給付金」を国民からの申請なしでプッシュ型で実現する予定です。
以下では、「プッシュ型給付」について解説をしていきます。
プッシュ型給付

プッシュ型給付とは、行政が給付金の対象者に対して能動的に給付金を支給するという行政サービスです。日本の行政手続きでは、伝統的に申請主義が採用されているため、プッシュ型給付は、今まで実現されずにいました。
しかし、公金受取口座登録法が成立し、マイナンバーと国民の銀行口座を結びつけることによってプッシュ型給付を行うことが可能となりました。ここでは、「子育て世帯の特別給付金」について解説するとともに、これからのプッシュ型給付についても説明していきたいと思います。
子育て世帯の特別給付金
低所得の子育て世帯に対して「子育て世帯の特別給付金」を支給することが決定しました。本給付金の支給を受ける場合には、申請書を提出する必要はありません。これは、プッシュ型によって、対象者には行政から自動的に給付金が支給されるようになっているためです。
また、新たに銀行口座を登録する必要もありません。児童扶養手当や児童手当などの今までの制度の中で、銀行口座の情報は市町村に登録されています。今回は、その口座情報と世帯所得などの情報を連携することによって、対象者を確定し、対象者に対しては自動的に給付金が支給されます。
このように、「子育て世帯の特別給付金」は、プッシュ型によって給付金が支給されます。
ほかの給付金にも普及?
「子育て世帯の特別給付金」は、一部の子育て世帯を対象にした給付金でした。しかし、「特別定額給付金」などのように国民全員を対象にする給付金もあれば、「児童手当」などの給付金も存在します。「プッシュ型行政サービス」がスタンダードになることで、これからさまざまな給付金が「プッシュ型」に切り替わることが予想されるでしょう。