マイナンバーカード制度の開始以来、政府や自治体はさまざま普及施策を打ち出してきました。制度開始当初は批判や懐疑論も多く、なかなか普及が進まなかったものの、2023年4月現在ではおよそ8,440万枚が交付され、人口に対する交付率は67%にまで増加しました。一方で、マイナンバーカードの普及率は都道府県や市町村によって大きく異なります。そこで本記事では、都道府県、市町村の規模別普及率ランキングを作成しました。一般的に規模が大きい自治体の方が普及率が低くなる傾向にあるため、普及率は同規模の自治体と比較することが必要でしょう。各自治体のマイナンバーカードへの取り組みをチェックする際に、ぜひ参考にしてください。
都道府県のマイナンバーカード普及率ランキング
まずは、47都道府県のマイナンバーカード普及率を確認してみましょう。
人口に対する交付枚数率で見ると、宮崎県が1位、愛媛県が2位、鹿児島県が3位となっています。
九州地方の自治体が上位を占めていることが特徴です。
順位 | 都道府県名 | 人口 【R4.1.1時点】 | 交付枚数 【R5.3末時点】 | 人口に対する 交付枚数率 |
---|---|---|---|---|
1 | 宮崎県 | 1,078,313 | 861,112 | 79.90% |
2 | 愛媛県 | 1,341,539 | 979,362 | 73.00% |
3 | 鹿児島県 | 1,605,419 | 1,168,840 | 72.80% |
4 | 山口県 | 1,340,458 | 973,625 | 72.60% |
5 | 佐賀県 | 812,193 | 587,898 | 72.40% |
6 | 広島県 | 2,788,687 | 2,008,833 | 72.00% |
7 | 鳥取県 | 551,806 | 394,186 | 71.40% |
8 | 岐阜県 | 1,996,682 | 1,417,795 | 71.00% |
9 | 奈良県 | 1,335,378 | 941,290 | 70.50% |
10 | 和歌山県 | 935,084 | 655,081 | 70.10% |
11 | 富山県 | 1,037,319 | 724,279 | 69.80% |
12 | 島根県 | 666,331 | 464,666 | 69.70% |
13 | 石川県 | 1,124,501 | 783,159 | 69.60% |
14 | 静岡県 | 3,658,375 | 2,545,498 | 69.60% |
15 | 秋田県 | 956,836 | 664,551 | 69.50% |
16 | 兵庫県 | 5,488,605 | 3,812,240 | 69.50% |
17 | 大分県 | 1,131,140 | 786,377 | 69.50% |
18 | 滋賀県 | 1,415,222 | 980,901 | 69.30% |
19 | 福井県 | 767,561 | 531,208 | 69.20% |
20 | 香川県 | 964,885 | 664,068 | 68.80% |
21 | 熊本県 | 1,747,513 | 1,203,084 | 68.80% |
22 | 山形県 | 1,056,682 | 726,001 | 68.70% |
23 | 岡山県 | 1,879,280 | 1,277,643 | 68.00% |
24 | 長崎県 | 1,320,055 | 895,696 | 67.90% |
25 | 福岡県 | 5,108,507 | 3,462,334 | 67.80% |
26 | 愛知県 | 7,528,519 | 5,034,977 | 66.90% |
27 | 三重県 | 1,784,968 | 1,188,579 | 66.60% |
28 | 千葉県 | 6,310,875 | 4,193,341 | 66.40% |
29 | 神奈川県 | 9,215,210 | 6,114,295 | 66.40% |
30 | 山梨県 | 816,340 | 542,008 | 66.40% |
31 | 青森県 | 1,243,081 | 824,448 | 66.30% |
32 | 徳島県 | 726,729 | 482,153 | 66.30% |
33 | 茨城県 | 2,890,377 | 1,914,206 | 66.20% |
34 | 大阪府 | 8,800,753 | 5,828,206 | 66.20% |
35 | 北海道 | 5,183,687 | 3,427,102 | 66.10% |
36 | 福島県 | 1,841,244 | 1,216,865 | 66.10% |
37 | 岩手県 | 1,206,479 | 793,017 | 65.70% |
38 | 宮城県 | 2,268,355 | 1,490,755 | 65.70% |
39 | 栃木県 | 1,942,494 | 1,267,785 | 65.30% |
40 | 新潟県 | 2,188,469 | 1,425,794 | 65.20% |
41 | 東京都 | 13,794,933 | 8,980,450 | 65.10% |
42 | 京都府 | 2,511,494 | 1,636,201 | 65.10% |
43 | 群馬県 | 1,943,667 | 1,252,770 | 64.50% |
44 | 埼玉県 | 7,385,848 | 4,716,815 | 63.90% |
45 | 長野県 | 2,056,970 | 1,310,014 | 63.70% |
46 | 高知県 | 693,369 | 438,950 | 63.30% |
47 | 沖縄県 | 1,485,670 | 810,567 | 54.60% |
普及率トップの宮崎県ではマイナンバーカードの普及施策に力を入れています。
例えば、県では県内3箇所でマイナンバーカードの申請サポートとマイキーIDの設定支援を行うイベントを開催し、マイナンバーカードの申請や利用を促しています。
また、宮崎県内の人口の6分の1程度を抱える都城市の普及率が高いことも、普及率の向上に寄与していると考えられます。
ランキング2位の愛媛県は、「マイナポイント」事業に最大4000円分のポイントを上乗せするなど、県独自の普及施策の効果で普及率を向上させています。
【人口規模別】市町村のマイナンバーカード普及率ランキング
次に、市町村のマイナンバーカード普及率を見ていきましょう。
全市町村のマイナンバーカード普及率
まずは規模に関係なく、すべての市町村の普及率の中から上位5つを確認します。
1位は新潟県岩船郡粟島浦村で99.10%、2位は新潟県東国東郡姫島村で98.30%、3位は宮崎県都城市で93.80%となっており、上位の自治体はほとんどの住民にマイナンバーカードを交付し終えていることがわかります。
また、普及率は人口が少ないほど高くなる傾向にある中、宮崎県都城市は16万人を超える人口を有しています。
実際に、都城市以降、90位を超えるまで人口10万人を超える自治体は現れないことからも、同市の普及率が異例であることがわかります。
順位 | 都道府県名 | 市区町村名 | 総数(人口) 【R4.1.1時点】 | 交付枚数 【R5.3末時点】 | 人口に対する交付枚数率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 新潟県 | 岩船郡粟島浦村 | 338 | 335 | 99.10% |
2 | 大分県 | 東国東郡姫島村 | 1,878 | 1,847 | 98.30% |
3 | 宮崎県 | 都城市 | 162,572 | 152,498 | 93.80% |
4 | 兵庫県 | 養父市 | 22,389 | 20,817 | 93.00% |
5 | 鹿児島県 | 鹿児島郡十島村 | 681 | 631 | 92.70% |
都城市では、「マイナちゃんカー」という独自施策を実施しており、マイナンバーカード申請補助用自動車「マイナちゃんカー」に乗った市職員が住民の自宅まで申請補助をしています。
さらに、同市では、タブレット端末を利用して写真撮影を行い、カード申請を無料で支援する取り組みも展開しており、こうした取り組みは全国で「都城方式」と呼ばれ、全国のモデルケースになっています。
政令市のマイナンバーカード普及率
次に、政令市(※)のマイナンバーカード普及率を見ていきましょう。
※令和4年7月5日時点で総務省に政令市と指定されている自治体のランキングになります。
参考:総務省「指定都市一覧」https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/bunken/shitei_toshi-ichiran.html
100万人以上400万人未満の政令市におけるマイナンバーカード普及率
100万人以上400万人未満の政令市では、以下のとおりです。
順位 | 都道府県名 | 市区町村名 | 総数(人口) 【R4.1.1時点】 | 交付枚数 【R5.3末時点】 | 人口に対する交付枚数率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 広島県 | 広島市 | 1,189,149 | 840,136 | 70.70% |
2 | 兵庫県 | 神戸市 | 1,517,627 | 1,062,561 | 70.00% |
3 | 埼玉県 | さいたま市 | 1,332,226 | 900,814 | 67.60% |
3 | 宮城県 | 仙台市 | 1,065,365 | 720,074 | 67.60% |
5 | 神奈川県 | 横浜市 | 3,755,793 | 2,529,050 | 67.30% |
5 | 大阪府 | 大阪市 | 2,732,197 | 1,839,555 | 67.30% |
政令市では普及率最高の広島市でも70%程度となっており、人口が少ない市町村に比べて普及施策を浸透させることの難しさが見てとれます。
50万人100万人未満の政令市におけるマイナンバーカード普及率
また、50万人100万人未満の政令市では、次のようになっています。
順位 | 都道府県名 | 市区町村名 | 総数(人口) 【R4.1.1時点】 | 交付枚数 【R5.3末時点】 | 人口に対する交付枚数率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 熊本県 | 熊本市 | 731,722 | 519,139 | 70.90% |
2 | 千葉県 | 千葉市 | 976,328 | 687,711 | 70.40% |
3 | 福岡県 | 北九州市 | 936586 | 642060 | 68.60% |
3 | 大阪府 | 堺市 | 826,158 | 567,029 | 68.60% |
5 | 静岡県 | 浜松市 | 795,771 | 541,305 | 68.00% |
政令市ではあっても人口が100万人未満であれば、普及率はやや高まる傾向があります。
愛媛県松山市では毎月第二土曜日にマイナンバーカードの専用窓口を特別に開設しているほか、市役所窓口で予約不要の顔写真無料撮影サービスを行うなど、申請のハードルを下げる施策を打ち出しています。
中核市のマイナンバーカード普及率
中核市(※)は60市以上存在します。以下では中核市を①40万人以上50万人未満、②30万人以上40万人未満、③30万人未満の3つに分類し、それぞれ普及率をランキング形式にしています。
※令和4年4月1日時点で総務省に中核市の指定されている自治体のランキングになります。
参考:総務省「中核市・施行時特例市」 https://www.soumu.go.jp/cyukaku/index.html
40万人以上50万人未満の中核市におけるマイナンバーカード普及率
順位 | 都道府県名 | 市区町村名 | 総数(人口) 【R4.1.1時点】 | 交付枚数 【R5.3末時点】 | 人口に対する交付枚数率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 宮崎県 | 宮崎市 | 400,918 | 318,086 | 79.30% |
2 | 広島県 | 福山市 | 463,324 | 333,890 | 72.10% |
3 | 岐阜県 | 岐阜市 | 404,304 | 287,487 | 71.10% |
4 | 愛知県 | 豊田市 | 419,249 | 291,538 | 69.50% |
5 | 大分県 | 大分市 | 477,584 | 330,614 | 69.20% |
宮崎県宮崎市は、2023年4月時点で、全国の県庁所在地の中でマイナンバーカードの普及率がトップの市となっています。
同市では、イオンモールなど市民が訪れるスポットに申請ブースを設置しており、申請者には食品をプレゼントするなど、さまざまなアイデアで普及率を向上させています。
30万人以上40万人未満の中核市におけるマイナンバーカード普及率
順位 | 都道府県名 | 市区町村名 | 総数(人口) 【R4.1.1時点】 | 交付枚数 【R5.3末時点】 | 人口に対する交付枚数率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 秋田県 | 秋田市 | 303,122 | 216,585 | 71.50% |
2 | 群馬県 | 前橋市 | 333,263 | 235,202 | 70.60% |
3 | 奈良県 | 奈良市 | 353,158 | 246,445 | 69.80% |
4 | 和歌山県 | 和歌山市 | 362,662 | 247,981 | 68.40% |
5 | 愛知県 | 一宮市 | 382,349 | 257,127 | 67.20% |
30万人以上40万人未満の中核市規模では、秋田市がトップの71.50%となっています。
秋田市では、毎月第二土曜、第二日曜、第四土曜、第四日曜の8時30分から16時30分まで、マイナンバーカードの交付やサポートを受け付けるなど、市民の暮らしに寄り添った体制を整えています。
30万人未満の中核市におけるマイナンバーカード普及率
順位 | 都道府県名 | 市区町村名 | 総数(人口) 【R4.1.1時点】 | 交付枚数 【R5.3末時点】 | 人口に対する交付枚数率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 広島県 | 呉市 | 213,008 | 154,062 | 72.30% |
2 | 鳥取県 | 鳥取市 | 184,557 | 131,252 | 71.10% |
3 | 大阪府 | 八尾市 | 263,693 | 183,265 | 69.50% |
4 | 長崎県 | 佐世保市 | 243,074 | 168,677 | 69.40% |
5 | 山口県 | 下関市 | 253,996 | 174,962 | 68.90% |
30万人未満の中核市におけるマイナンバーカード普及率では、広島県呉市が72.30%でトップとなりました。
呉市は、市内に事業所を置く企業や地域団体(自治会やサークルなど)に市職員が出張して申請サポートをしており、こうした地道な取り組みが普及率の向上に寄与していると考えられます。
小規模市町村人口別マイナンバーカード普及率
次に、人口20万人未満の小規模市町村のマイナンバーカード普及率ランキングを確認していきます。
人口5万人以上20万人未満の市町村におけるマイナンバーカード普及率
20万人未満では宮崎県都城市が唯一の90%台となっています。
順位 | 都道府県名 | 市区町村名 | 総数(人口) 【R4.1.1時点】 | 交付枚数 【R5.3末時点】 | 人口に対する交付枚数率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 宮崎県 | 都城市 | 162,572 | 152,498 | 93.80% |
2 | 石川県 | 加賀市 | 64,276 | 54,130 | 84.20% |
3 | 宮崎県 | 日南市 | 50,958 | 41,402 | 81.20% |
4 | 山口県 | 岩国市 | 130,340 | 101,908 | 78.20% |
5 | 島根県 | 浜田市 | 51,546 | 40,125 | 77.80% |
先に触れた都城市では、普及施策だけでなく、「カード取得による利便性の向上」にも力を入れています。
同市では、「カード取得による利便性の向上」マイナンバーカードを登録することで、スマホやパソコンから電子母子手帳を確認できるサービス、ふるさと納税の申請をスマホで済ませることができるサービスなどを展開しています。
人口8千人以上5万人未満の市町村におけるマイナンバーカード普及率
人口8千人以上5万人未満の市町村におけるマイナンバーカード普及率は以下の通りです。
順位 | 都道府県名 | 市区町村名 | 総数(人口) 【R4.1.1時点】 | 交付枚数 【R5.3末時点】 | 人口に対する交付枚数率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 兵庫県 | 養父市 | 22,389 | 20,817 | 93.00% |
2 | 山口県 | 柳井市 | 30,550 | 26,084 | 85.40% |
3 | 高知県 | 高岡郡四万十町 | 16,107 | 13,503 | 83.80% |
4 | 福井県 | 三方上中郡若狭町 | 14,131 | 11,831 | 83.70% |
5 | 宮崎県 | 西都市 | 29,190 | 24,261 | 83.10% |
人口8千人以上5万人未満の市町村では、兵庫県養父市が93%と高い普及率になっています。
養父市では、市独自のマイナンバーカードケースを作成し、窓口で配布しているほか、宮崎県都城市と連携してマイナンバーカードの利活用検討を進めているなど、普及施策に積極的な姿勢が見られます。
具体的には、オンライン申請、図書館カード、各種証明書のコンビニ交付サービス、遠隔行政窓口、申請書作成支援システムなどの利活用を検討していく方針です。
人口8千人未満の市町村におけるマイナンバーカード普及率
人口8千人未満の市町村におけるマイナンバーカード普及率は、以下の通りです。
小規模な町村部では、大規模、中規模市町村に比べて交付枚数率が高い傾向にあります。
順位 | 都道府県名 | 市区町村名 | 総数(人口) 【R4.1.1時点】 | 交付枚数 【R5.3末時点】 | 人口に対する交付枚数率 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 新潟県 | 岩船郡粟島浦村 | 338 | 335 | 99.10% |
2 | 大分県 | 東国東郡姫島村 | 1,878 | 1,847 | 98.30% |
3 | 鹿児島県 | 鹿児島郡十島村 | 681 | 631 | 92.70% |
4 | 長野県 | 南佐久郡南牧村 | 3,065 | 2,771 | 90.40% |
5 | 北海道 | 有珠郡壮瞥町 | 2,392 | 2,146 | 89.70% |
人口8千人未満の市町村においては、上位はいずれも小規模な町村部となっています。
その中でも比較的人口の多い長野県南佐久郡南牧村では、2020年10月からカードを取得した人に村で使える商品券を配ったことで、一気にカードの交付率が向上したようです。
まとめ
これまで見てきたように、都道府県別では九州が普及率でリードしている傾向が見られます。
一方で、政令市など人口規模の大きな都市ほど普及率は低く、人口規模が小さい町村部ほど普及率は高く出る傾向が確認されました。
このように、市町村で普及率を比較する際は、人口規模を加味して比較することが重要です。